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Dec 1, 2016

世界丸ごと食べ歩き

New York 編 (3)

”NYの和食トレンド”

Photo & Text by Mark Akabori

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私自身、本年66歳を迎え、日ごろの不摂生から腰が痛いどこが痛いと、この歳になると誰しも体に異変が起き最近体調が気になりだした。そして、同年代の友人との会話も自ずと健康の話が多くなり歳はとりたくないものである。

プロフィールに書いた出生時の秘話は私がこの世に生を受けたのは、なんとなんと、おやつの時間午後3時丁度であった。母親は出産前に何でもおはぎが食べたいと思っていたら、おぎゃと桃太郎ならぬ私が生まれたそうである。

故に自己のDNAは先天的食いしん坊症でこの歳で先の体の変調はあるものの, 胃だけは妙に絶好調で丈夫であり,消化吸収がよすぎて体重が減らない要因ともなっていると自己診断している。

でも、これは人間として幸せなことであり、美味しいものを食べ美味しく感じられるのは健康であればこそである。長生きするには心と身体の健康を守る毎日の食事が大切である。

人は誰しも美味しいものを食べて不機嫌になったり怒ったりする人はこれまで見たことがない。

むしろ、美味しいものを食べると人は皆、会話が弾み、幸せに浸り、恋人同士は仲が深まり、夫婦仲良く、家庭円満という美味しい食事=幸福というのが持論である。

現在50歳の人が80歳まで生きると仮定するとこの間にざっと3万食を食べる計算になる。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかはその人次第である。そして、果たしていつまで一日3食の食事を食べ続けられて、健康で美味しく食べられるかと思うと、今から日々の食事を大事にしたいと思うのである。

私は人生の最期を迎えてもあの店のあの美味しいものを食べられればこの上ない幸せと願っている。

現時点ではなかなかそれを一つに絞り切れないのであるが、、、、。

私の信条は基本的に一食入魂である、たとえ遠くでも時間を惜しまず、東西南北、美味しものがあれば飛んでいき食べたい性分である。そして、美味しいものを食べて皆が喜んで満足している笑顔を見るのが大好きである。

一食入魂というこの言葉はかの有名な劇作家で今や総合的なクリエターとして売れっ子の小山薫堂氏が雑誌連載で使い、著書の人生食堂でよいことを書いているのでここで紹介しておきたい。

かの北大路魯山人の“座辺師友(ざへんしゆう)”という言葉を引用し、自分が食べるものが全てが師であり友である。料理の作り手を敬い、同じ食卓を囲む人と一緒に楽しむことである。“食べる”という行為をきかっけにして学んだことがたくさんある。そして、随分と食によって人間関係も助けられたと記述している。

私は人生において食にこだわり、楽しみ、そして友と味を分かち合いたいと願う男の食跡をこのエッセイを通じ読者に伝えたい。

さて、私自身はその時々食べたいものが変わるが、やはり断然、和食が大好きである。

和食の奥深さは世界の名だたる料理人が熱い視線を送り和風のだし、うまみ、食材に至るまで研究しつくされ今や世界の食のシーンに取り入れられ重宝されていることを、ここにきて頻繁に目にする時代に入った。

“和食”=日本の食文化がユネスコの無形文化遺産に昨年12月に登録されたことは皆さんの記憶に新しいところである。


《ユネスコ形文化遺産に登された「和食;日本人の伝統的な食文化」とは》

南北に長く、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。このような、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。

 「和食」の4つの特徴

(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。

(2)健康的な食生活を支える栄養バランス

一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っています。

(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現

食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。

(4)正月などの年中行事との密接な関わり

日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。


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NYには テークアウトも含め現在千軒を超える日本食レストランがあるといわれ、中には日本食もどき店も数多く日本人オーナー以外が運営する店も少なくない。しかし、NYは世界的に見て日本を除けば精進料理やお好み焼きやとんかつ専門店まで全ての和食が揃い世界で一番の激戦区で味のレベルもかなり高いと思う。

今回行った炭火焼の焼鳥屋が日本でもかなり高いランクに位置すると思われ、「鳥心」は実に大満足であった。取り扱いの鳥の部位もすべて揃い、とにかくうまい海外でダントツに一番の店である。

そしてこのうまい焼鳥は日本の大学卒業し日本語が達者でこの道に入ったバングラデシュ人が焼き手を務め、このシェフは根っからの職人気質で仕事に大変誇りをもっている。

近未来で和食シェフがいつまでも日本人だけでやる時代は早晩なくなりどんどん現地人を採用し教育し育てる現地化の時代がすぐそこまで来ている。

焼鳥にとどまらず青い目の本格的な寿司職人を輩出するなど、そういう意味で現場での技術移転が進み和食文化継承の担い手が現地化することは長期的な視野に立てば大変嬉しいことでもある。

http://torishinny.com/

NYに暫く暮らし、和食がよりスタイリシュでよりお洒落になっていることは想定していたが,食べ手である米人の和食への意識の変化をここに来て如実に感じた。

日本食との出会いは、おそらく新しいもの好きの米人が興味本位、もしくは、ヘルシーでクールだからという理由が発端であったと思われる。ところが我ら日本人が普通に食べている日本食に目を向け、失礼であるが米人にもその味がわかりつつあるのではないか。

ある米人曰く、和食は麻薬であり毎日口にしないと禁断症状が出て生きていけなくなり、和食レストランでの、このEXPENSIVE EATING HABITSからもはや抜け出せないというのである。そして自分の祖先はひょとすると日本人かもしれないとも真剣に思っていると言わしめたのである。

ランチ時に列をなしてBENTOを買い求める米人そして定食屋まで現れ、ちょっとした小鉢の数々も受け、昼も夜も大繁盛だし、ラーメン屋がこれまた長蛇の列ができる大人気で出店ラッシュ、かと思えば、そばを食べに毎日のように通い詰める人がいる。

一昔前なら米人は総じて猫舌でラーメンの熱いスープは苦手というイメージが強く万人には受けないと思えた。しかし、米人が日本人の習慣に倣いラーメンやそばを同じように音を立てて食べる光景には今だ出くわさない。(笑)

いつものようにすし屋で大将の前に陣取って握ってもらっていると隣の米人が誰に教わったのか今日はヒラメのえんがわや赤貝のひもあるかと尋ねるのを聞くにつけ、遂に、ここまで来たのかと、目を白黒させてびっくりした。そういえば、私が食べているのをそっとそばで一挙手一投足を観察しそれは何ですかと非常に研究熱心にノートまで取る米人を目にした。この人は寿司にすっかりはまり、未知への美食のいざないに取りつかれている姿は私にはとても好感を覚える。

さりとて、米人全部が全部そうではないが、もはや、これまでのようにカリフォルニアロールなどの巻物だけを注文し、ワサビをたっぷり入れた醤油にドボンとつけて大量のガリとともに食べる時代ではなくなりつつあり、米人なりに和食の味覚が着実に向上しているように思う。

NYの和食はあの有名な「ノブ」や「モリモト」に代表されるように,先ずは視覚からアッと驚くプレゼンや洋風な器もなかなか凝っていておしゃれであり、この分もあり割高感があるのも否めない。というかNYはリース代などの所場代が高いので最初から割高設定になるのかもしれないが、皿に描かれたアートのような上品な少量の盛り付けなどややもすれば表面的な形に重きが置かれ、肝心な料理のほうは、いまいちで食本来の食事後の満足感が得られない店も多くあり誠に残念である。そのうえ高級和食の後に口直しと腹が減りラーメンを食べて帰ったのである。(笑)

ワインに倣って食事のメニューに合わせてマッチングする日本酒のペアリングは以前からありはしたが、最近のNYでは焼酎までペアリングし発泡酒系の日本酒の品揃えを売りにしている店も出てきており新規需要を創造する店側の商魂たくましさの一面も感ずる。

読者の中でもここで意見が分かれると思うが、米国発祥のこれまでに無い和食の新しいスタイルが生まれ、変形というか進化というか、最近特に見受けられるようになった。

しかし、カリフォルニアロールがすでに市民権が得たように、和食をさらに発展させる試みを持って、邪道と一言でかたずけて否定するのは私には賛成しかねる。今回、ご紹介したいのは王道の江戸前寿司の美味しい店もNYには無論あるが、あえて新しいことに挑戦する寿司屋2軒をご紹介し是非機会をとらえ味わっていただきたい。

一軒目はどちらかというと創作ずしのジャンルであるが寿司のネタにトッピングとわさびに限定しない味付けと食感を大切に工夫が施され、ネタとの味のハーモニーを演出するのが“ガリの寿司”という店である.

バリエーションは約40種類あり一度に食べられないが、サーモンに玉ネギとバルサミコ,ハマチにはハラペーニョ、いかには大葉と梅干、マグロには海苔とたくわんなどなど組み合わせの合性は抜群で素晴らしいハーモニーを奏でる。江戸前寿司とは似て非なるものであるが、実際食べてみると、これはこれで、ネタの持ち味が引き出されとても美味しくそして楽しく私は好きである。http://www.sushiofgari.com/

もう一軒はテーブル席がフランス料理のたたずまいでソムリエが酒の説明にきてジャズが流れ美味しい酒の当てが次々出され寿司とのコース仕立ての人気の店でローケションから名付けられたEAST15RESTAURANTという店である。

両方とも超人気店につき予約は必須です。http://15eastrestaurant.com/about/

もう一軒、読者に是非とも行ってほしい焼肉の店TAKASHIをご紹介しておきたい。

NYに行くたびここを訪れたくなる。韓国焼肉とは一線をはるかに越えた創作的なメニューで全米ベスト15レストランにも選ばれた焼き肉屋で日本でもこの店に類似した店にお目にかかったことがない。

まずは下記にリンクしてSPECIALSのメニューをご覧あれ。

全てをオーダーしたい気になってくる。K-F-C、や 肉ウニこれが実にうまい!!

上質の霜降り和牛刺し身にウニを乗せ大葉と海苔を巻いてワサビを乗せしょうゆで食べる。

いかの黒インクのリゾットに味噌をマリネしたショートリブのせ、などなどこの組み合わせがうまくないわけがない正しくあっぱれである。暫く前に、 日本で食中毒で生肉のユッケが安全面から焼き肉屋から消えた時期があったが、NYのこの店は肉の品質と調理には絶対の自信を持っており、自慢のユッケを提供継続していたことが海を越えて話題になったことがあった。この店に感心するのは行くたびに新メニューが開発され美味しいものへのあくなき追及は本当に立派である。この店は値段もリーズナブルで予約を取らないので5時半の開店に間に合うよう早めに行って並んで待つのが席を待たずに済むので正解である。http://takashinyc.com/

こうしてみてくると、米国の和食の独自進化の試みも私としては大いに評価しておりシェフも頑張っているので、こちらの米国版メニューがいづれ日本へ逆上陸することも大いにあり得ると確信する。

NYの食はまだまだ書きたりないのですが、この辺でお後がよろしいようで。4号からNYを発ち欧州編で1カ月の列車の旅で訪れたグルメ紀行をお楽しみに次回はスペインのバルセロナそして食の都サンセバスチャンをご案内したいと思います。

乞うご期待!!

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Mark Akabori

Mark Akabori

1950年5月18日生。この世に生を受けた時間がなんと午後3時おやつの時間でこの時から先天的食欲症で食べること大好き人間。それが講じて男の手料理をたしなむ。 父は生命保険会社勤務で当時は自宅接待が多くお客さんの多い家庭に育ち母親は料理上手。 青山学院大学卒業後、日産自動車(株)本社に勤務。米国イリノイ大学ビジネススクール(MBA)社費留学を契機に米国を中心にカナダ、中東を含め累計約25年間駐在し訪問国は70を超える。 本年66歳を機に日系自動車販売会社のカナダ事業CEOから現役引退し、自宅のある米国ミシガン州のデトロイト郊外に暮らす。
Mark Akabori

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コメント5件

アバター Anna | 2016.12.05 14:50

NYで焼肉、、は考えたことなかったです。でもとても美味しそうですね。あとEast 15 Restaurant は今度是非行ってみたい!赤堀さんの記事を読んで「和」の魅力も、実は尽きないのかも、、、と思い始めました。笑。そんな時が私にも来るかもしれません。。。スペインの食の話も心待ちにしています!(9年前にスペインに行った時にどこで食事をしても外れがなかったくらい美味しかったのを覚えています。)

アバター Maria | 2016.12.06 2:02

NYは色んな人種でモザイクな町ですが食の方もモザイクですね!
Sushi of gariのあの組み合わせもそれぞれの国の美味しい材料をお寿司の上に乗せて一つの美味しい味が生まれるのですね。
世の中も国境無しの地球人になれたらいいですね。

アバター keiko watanabe | 2016.12.06 4:26

やっと拝読することができました。超豪華人生食の列車世界の旅を満喫のご様子。私には夢の又夢の道のようですが拝読しながら自分が各レストランで味わっている様な、豪華な気分にさせられましたわ。出された物に深く、広く感心を寄せながら、時には仲間と、時にはひとりゆっくり味わいながらそりゃあなんも至福の時間ですよね。日本滞在中、日本の味を噛みしめ、世界での日本の料理を味比べ、お身体に気をつけて多いに人生を楽しんでください。欧州編どんなものを私たちにご馳走してくださるのか、赤堀シェフの味を楽しみにしています。ありがとうございます。満腹じゃ~。

アバター ゆめ | 2016.12.06 11:11

なんて美味しそうな写真!NYもすごいですね!

アバター Jerry Miyauchi | 2016.12.07 0:45

赤堀さん、
食事をとる回数は限られているので、毎回の食事は大切にしたい気持ちは同じです。赤堀さんはもう魯山人の域を超えた感じがしますね。またお食事に同席させてくださいね。
Jerry

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