Magazine
Dec 1, 2016

和なこと体験記

師走

~着物の美学

 Text by Megumi Nishijima

megumi_dec

着物に関する最も古い私の記憶は、七五三。母に着付けてもらったのだけど、「お腹が苦しいなぁ」ということと、「口紅って変な味がする」と思ったことをよく覚えています。

夏祭りでは浴衣、お正月にも着物を着、それこそ子供時代は要所、要所でお世話になっていたけれど、成人式で「振袖を着ない」という選択をして以来(当時は他人と同じことをするのが大嫌いで、「みんなが選ばない方」を積極的に選んでいた)、私の人生からは縁遠いものになってしまいました。

けれど30歳を過ぎると、ドレスより着物の方が似合う感も出てきたりして、それは「ウエディングドレスもいいけど白無垢も捨てがたいよね」なトーンと似ていて、「やっぱりそろそろ着物を学ぼう」という思いは年々強まるばかり。そんなわけで「初心者にもわかる着物講座」に足を運ぶことにしました。

訪れたのは、表参道駅にあるお教室。緊張しつつエレベーターを降りると、にこやかな女性が迎えてくれました。ものすごく怖い先生だったらどうしようと半ば不安だったので、一安心。

「今日は外が寒かったから、寒い地域で作られた紬の着物を着てきたのだけど、これ、本当に暖かくって。お部屋に入ると暑いくらいです」と、朗らかに笑う姿が素敵です。

 

着物は大きく「染め」と「織り」に分けられ、「染め」は白い糸で織った白布を染めたもの、「織り」は染めた糸で織ったもの。

「みなさんがよく着られるのは『染め』の着物が多いでしょうね。模様も華やかなので、とても女子力が高い着物です」と先生。

先生は織りの着物をよく着るらしく、「ちょっと男っぽい感じが好きなんです」。でも、織りの着物はナチュラルっぽい色合いなので、普段着にしやすそう……と思ったり。

江戸小紋や御召など、初めて聞く言葉もたくさんで、終始メモを取りっぱなしでした。以下、ご参考になれば……。

 

  • 江戸小紋は、柄が細ければ細いほど高級(まさに点描画みたい)。フォーマルにも普段着にも使えるため、最初に購入する一枚としてもおすすめ。

 

  • 御召は上等で値段も高いが、「すごくシャリがいいし、着ていても崩れない」そう。やはりお値段と質は比例する様子。

 

  • 未婚女性の正装としてもおなじみの振袖。長い袖を左右に振ると「好き」、前後に振ると「嫌い」を意味したそう。そんなふうに袖を振って意思表示をしていたのでしょうか。なんだか、萌え文化の走りのような気が……。

 

そういえば参加者さんからの質問コーナーもあったのですが、「袖などの丈が短い場合、対処法はありますか?」という問いへの答えが衝撃的で。

「そういう場合は、こうしてごまかします」と、ヒョイッと腕を引っ込める先生。

えーーー、そういうのアリなんですね!!!!とまるでコント。

「物を取るときは袖をまくればいいですし、つり革をつかむときはどのみち袖がめくれてしまいますから、意外と大丈夫なんです」

やばい、この先生、大好き……!と、一気に心を持っていかれました。

 

厳密に言うとタブーのコーディネートなどもあるそうですが、大切なのは周囲の人に嫌な思いをさせないこと。たとえば本来は冬には着ない生地であっても、暖色系の色で寒々しい印象を与えないのであれば、着ても構わないそうです。

そういえば江戸っ子は、夏の盛りに雪だるまや雪の結晶の柄の着物を着て、目で涼を楽しむなんて粋なことをしていたのですっけ。

あくまで「見る人ありき」で、相手の立場に立って身につけるものを選ぶ。着物文化にも日本人の思慮深さはしっかりと息づいているのですね。


今月の教訓:周囲に与えるイメージや影響を想像して、身につけるものを選ぶことが大事


 

The following two tabs change content below.
Megumi Nishijima

Megumi Nishijima

文筆家、編集者、ヨガインストラクター、数秘リーダー。東京在住。 自分軸で豊かに生きる大人のためのコミュニティ「hatobaの会」発起人。幼少期より物語や言葉の持つ力に惹かれ、現在は出版業界に勤務。25歳でヨガを始めたこときっかけに、心・体・たましいのつながりに興味を持つ。「地に足のついたスピリチュアル」をテーマに、五感で感じたことを大切にしながら、自分の思いや体験を綴っている。
Megumi Nishijima

最新記事 by Megumi Nishijima (全て見る)

Comment





Comment