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Mar 1, 2017

世界丸ごと食べ歩き

スペイン編

サンセバスチャン三ツ星

Photo & Text by Mark Akabori

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今回の旅でかねてから、ぜひ訪れたいと思うミシュラン3つ星レストランがサンセバスチョンにある。

三つ星レストラン“マルティン・ベラサテギ”のオーナーシェフは生粋のサンセバスチャンっ子で両親がバルを営む家に生まれ、今やスペインを代表するスターシェフである。

この店は評判が高く、自分で何度電話しても安の上予約がなかなか取れない。

最後の可能性を求め宿泊先のバルセロナのGRAND HOTELのコンシェルジュに5日間の滞在中で昼夜いつでもよいので予約を取ってほしいと強く懇願した。彼曰く、私のあまりの迫力に負けシェフと友人関係にあるホテルオーナーにわざわざ頼みこんで、シェフに直接連絡してもらい幸運なことに予約を確保してくれた。

この時はとても嬉しい心躍る瞬間であった。

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さて、どこのレストランへ行っても、何か苦手な召し上がれないものありますかと聞かれるが皆さんはどのような答えをされるでしょうか。多くの方が誰しも嫌いなものがあると思っていたら意外や意外ありませんと答える方が多いように思える。

私自身、自称グルメで美味しいものハンターであるが、実は大学4年生まで恥ずかしながら、いい歳をして子供でもないのに大嫌いなものがあり、これを嫌いと人前で口にすることすら正直嫌でしょうがなかった。

しかし、これを何とか克服できるに至った人との貴重な出逢いがあり、社会人になる前にクリアー出来たことに今ではその方に大変感謝しているのである。

 

大学3年生のある日、渋谷キャンパスを仲の良い友人と歩いていると、身なりがきちんとして上品な中年の美人女性が現れ、少しお話しする時間がありますかといきなり声をかけられた。友人はいつになく気を使いその場で席を外した。その後、友人はあの美人女性が何故、私に声かけたのか色々詮索し、面白おかしく、勝手気ままに好奇心を持ち推理を働かせていた。一人は私の女友達の親が交際を心配して本人に内緒で面談しに来たのではないか。また他の友人は芸能プロダクションのスカウトだとかホストクラブの勧誘とかとてつもない想像をしていた。

私自身もその方と初対面でなぜ私に声かけたのか疑心暗鬼で今少し話を聞いてみたい気持ちになった。

話を聞けば、某大手デパートの部長夫人で、娘の大学受験に際し母校が第一志望で英語の家庭教師をお願いしたいとのことであった。私自身、182㎝の長身で今と違いスリムな容姿で真面目そうで目だったとのことでセレクトされたらしい。私自身、英語は得意科目で好きなので週2回の家庭教師も悪くないなと思ったが、次のステップとして教え子の相性もあるので、先ずは娘さんにお会いしたいと申し入れた。

そして、次週に娘さんに会い中高私立女子高で家族は姉妹の次女で、少女のようなあどけなさが残る素直で可愛いい母親似のお嬢さんであり、ほっとして家庭教師を受けることにしたのを覚えている。

そして、英語は苦手と聞いていたが、本人がすごく几帳面で頑張り屋の性格なので指導力次第で必ずや英語力は伸びるとその時すでに確信した。

毎回教えた後に料理上手なお母さんが夕食を用意して下さり一緒に食べ家族ともすっかり打ち解けた。

ところが最初に食事した時に特製ビーフシチユーが出て大変美味しかったがそこには大嫌いな大きいニンジンが乗っており、もちろん食べ残した。恥ずかしながら、私が大の苦手な食べ物はあのニンジンでお馬さんの餌だと私の中では内心位置づけていた。生のニンジンの独特の甘さが大嫌いで子供のころから食べるのを避けて親泣かせであったが決して口にしなかった。それを聞いた教え子のお母さんが辺な正義心に燃え、何とかしてあげたいと思いと逆襲に出てきたのである。来る日も来る日もニンジンオンパレードでこれでもかと攻められ、その上大嫌いなニンジンの生ジュースまで登場し、これを飲み干さないと家に帰してくれない異常な事態になってきた。鼻を抑え味を感じないように耐えに耐え無理して飲み干した。この時ばかりはこんな思いをしてまで、この家庭教師を持続することもないと、真剣に思ったのであるが、そこまでして偏食を変える努力してくれるお母さんの気持ちがまた嬉しくもあった。結果として、このお陰をもって最終的におこちゃまの大ニンジン嫌いを何とか克服することができ、今では大変感謝している。

加えて、娘さんの英語の成績も著しく向上し本人も家族も大変喜んでくだ下さった。私が何より嬉しかったのは英語嫌いの彼女が英語をすっかり好きになり母校の難関の文学部英米文学科に見事合格したのである。

彼女が大学入学後も時折会い、元住吉の自宅で食事をご馳走になり、私にとって教え子は純粋に可愛いい妹のような存在であった。そんな彼女も大学に入りお年頃とともに、バレンタインに自家製のチョコレートくれたり誕生日にセーターやマフラーを編んでくれ、いつしか家庭教師と教え子の関係以上の乙女心を感じるようになっていた。

当時、私には同じ大学仏文科に大好きなガールフレンドがおり、いかに彼女の純粋な気持ちを傷つけずに真実を打ち明けるか頭を悩ませていた。そんな矢先に今度は母親から彼女の胸の内を明かされ親としても将来的には私と結婚させることを願望していると言われ益々エスカレートしてきた。

そして、彼女の気持ちが痛いほど分かるだけにこれ以上放置できず間髪を置かず、話したほうがよいと思い、正直心の内を打ち明けた。その後、彼女は優秀な成績で大学卒業し、生保会社に就職し職場結婚で2児の母として幸せな生活を送っている。

 

その日、三つ星レストランで何か苦手でお嫌いなものがありますかと聞かれ、もはやニンジン嫌いと言わないで済むことに昔のエピソードが懐かしく思い出された。

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長年の願いがかなってマルティン・ベラサテギへ行く待ちに待った日がついに訪れた。今日の予約は昼であったが昼夜と同じメニューを出すのが嬉しい。

店はサンセバンスチャン市街から車で20分離れたロケーションで住宅街にあるご自宅に招かれたような佇まいで丘に建つ眺望の良いレストランであった。

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当日はスペインの国会議員の一団が訪れており、スターシェフが対応している姿が見えた。

日本でもそうだが国会議員は予約が取れないレストランも手に入らないお酒も特権階級で入手できるのが羨ましいというか別枠は一般人にとって正直ずるいと思うのは私だけだろうか。

この店の当日食事メニューと食事に合わせたペアリング(少人数の場合は特に食事にあった美味しいワインがコスト的にも割安でお得)で飲んだワインを一挙公開したい。

PAISAJE DE LAS ISLANS  2014, BARCO DEL CORNETA  2014, PAGO DE CIRSUS 2007, FIND ELECTRICO, O ‘ESTEINO 2014, CANDIO 2013, ALION 2007, CASTA DIVA 2013

ご覧あれ下記のセットメニュー構成は過去に好評だったアラカルトも取り混ぜこの店の料理集大成であることがよくわかる。日本人訪問客も多いと見えて日本語のメニューも有り。

料理はプレートに絵を描いたような繊細で美しく、手の込んだ革新的な料理が提供され、各プレートがどれも見て楽しい、美しい、そして何より美味しい、素晴らしいの一言でさすが3つ星の実力を実証するものであった。私の生涯で食べた食事の中でトップクラスに値する総合的な美味しさで大満足であった。

そして食後にマルティン・ベラサテギ氏オーナーシェフがテーブルを訪れ、話す機会を得たがシェフの気取らない温かい人柄にふれ、美味しさの最大のエキスはシェフの美味しいものを食べさせたいという情熱と真心によるものだと強く感じたのである。

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当日のメニュー

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スペインの誇る3つ星レストランの料理はいかがでしたでしょうか。

次号はイタリー訪問前に今回5日間滞在したサンセバスチャンのさらなる魅力を紹介すべく近郊の街に見つけた絶品のステーキとシーフードのお店を訪れたいと思います。乞うご期待!!

Restaurante Martin Berasategui  HP

http://www.martinberasategui.com/es/inicio

 

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Mark Akabori

Mark Akabori

1950年5月18日生。この世に生を受けた時間がなんと午後3時おやつの時間でこの時から先天的食欲症で食べること大好き人間。それが講じて男の手料理をたしなむ。 父は生命保険会社勤務で当時は自宅接待が多くお客さんの多い家庭に育ち母親は料理上手。 青山学院大学卒業後、日産自動車(株)本社に勤務。米国イリノイ大学ビジネススクール(MBA)社費留学を契機に米国を中心にカナダ、中東を含め累計約25年間駐在し訪問国は70を超える。 本年66歳を機に日系自動車販売会社のカナダ事業CEOから現役引退し、自宅のある米国ミシガン州のデトロイト郊外に暮らす。
Mark Akabori

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コメント8件

アバター 蛍子 | 2017.03.04 0:21

うわー、淡い長身の若き赤堀氏のロマンスも交えた素敵なスペインのサンセバスチャン頼りを楽しく読ませて頂きました!
次回もワクワク待ってま〜す。

アバター ゆめ | 2017.03.04 7:12

とうとう赤堀さんの過去があらわに!笑…でもさすがに爽やか!お料理本当に素敵ですね
夢が広がります

アバター Jerry | 2017.03.04 9:11

大兄にも苦手な食品があったのかと、いまさらながら驚いております。私は納豆が苦手でしたが、今ではよく食べるようになりました。これは健康を維持する方法のひとつで、仕方なく食べ始めたのですが、今では好物の1つとなってます。
若い時のことは今思うと、ほんとにレモンスカッシュのような、なんとなく甘酸っぱい懐かしい気持ちになりますね。

アバター Masukun | 2017.03.04 15:32

教え子のその後の人生まで知っていたんですね!(笑)
仏文科の亡き彼女も草葉の陰で笑ってますよ。
サンセバスチャン行ってみたいですね!

アバター marmar | 2017.03.04 21:49

赤堀先輩
サンセバスチャン、楽しく読ませて頂きました。何より、大学時代の先輩のスリムな姿が目に浮かび懐かしかったです。
お互い大きく成長し過ぎましたが(笑)、また帰国されたら美味しい料理と温泉楽しみましょう!

アバター Anna | 2017.03.05 1:22

いつも食にまつわる、赤堀さんの過去のエピソード、食い入るように(笑)読ませてもらっています。このレストランも美味しそうなのはもちろん、食べてしまうのがもったいないくらい、何よりも美しいですね!サンセバスチャンの魅力が私の中でどんどん広がっていきます。。次回も楽しみ!

アバター チカ | 2017.03.06 17:56

サンセバスチャンの情報を探していて辿りたどりつきました!
文章を読ませて頂くと赤堀さんのお人柄に魅了されますね。
これから先の話も気になります!

Nobu Nobu | 2017.03.07 17:32

もしや赤堀さんの奥さんになられた方では? と思って読んでいましたが、違いましたね。しかし、赤堀さんが人参嫌いだったとは?! びっくりです。

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