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Aug 2, 2017

数学的妄想

iがいっπ e世界 (愛がいっぱい、いー世界)

Art & Text by Nobuko Igaki

Untitled-1

数学における3つの不思議な数

円周率π、虚数単位i ( i2 = -1となるような想像上の数)とともに、高等数学では、3つめの不思議な数eが登場する。π=3.141592・・・ と同様、小数点以下が無限に続くような数e=2.718182・・・である。大学一年生の数学で、y=exの微分がy’=ex になる、つまり、まったく元の関数と変わらないという話しのところで登場する特殊な数であり、ネイピア数と呼ばれている。

 

オイラーの公式

スイス生まれの数学者オイラー(1707-1783)が、この3つの不思議な数たちの間の美しい関係

             eiπ= -1

を発見した。これは、オイラーの公式と呼ばれていて、もっとも美しい数学の公式だとも言われている。この公式にフォーカスした解説本も出版されている。516ページに及ぶ大著である。(「オイラーの贈り物 人類の至宝eiπ-1を学ぶ」東海大学出版、吉田武著)

 

宇宙人もオイラーの公式をもつか?

ある別の惑星に、人間並みの知能をもった宇宙人がいたとしたら、かれらも、数えるための正の整数や、ゼロや、負の数を使い始めるだろうし、そのさきでは、必然的に、円周率と虚数単位とネイピア数を使うようになるであろう。しかし、このオイラーの公式のようなシンプルな公式にたどりつくかどうかはわからない。というのも、この関係式の裏には、ある必然的ではない記法のからくりが隠れているからである。

 

秘密はラジアン

その秘密は、角度を表すのに、一周360度の度数法を使うのでなく、一周2πのラジアン(弧度法)を使うことにある。360度は、弧度法でいうと2π、180度はπ,90度はπ/2である。このように、ラジアンという単位さえ書かないことが多い。角度をどのように表すかには、なんの必然もないから、一周が360度である必要もないし、弧度法のように、半径1の円周の長さ2πに対して、ある角度に対応する弧の長さでその角度を表すという必要もない。しかし、地球の日常では、「人生が180度変わった!」などの表現に見られるように、度数法が多く使われるのに対して、高等数学では常に弧度法が使わるのには理由があるのだ。そう、ちゃんとした理由があるのだから、宇宙人もそれに気づく可能性は高いかもしれないのだが。オイラーが気づいたように。

 

オイラーの公式の解説

詳細を述べると本一冊分の分量にもなるこの公式の解説を、ここでは大胆にも、わずか半ページでご紹介しようと思う。ご興味のある方は、お読みくだされ。

実は、ex は、下記の(式1)のように、xの無限の多項式の形で書くことができる。(これは級数展開と呼ばれる。)この式のxのところに、iθを代入して、i2= -1, i3= -i, i4= 1 に注意して変形すると、(式2)のようになり、となり、おやまあ、三角関数のsinθcosθまで飛びしてきた! これは、sin x cos x の級数展開が弧度法を使ったときのみ、(式3)と(式4)のようなシンプルで美しいものになるからなのである。

式のスクリーンショットさて、ここで得られた世にも美しいeiθ = cosθ + isinθ の両辺のθのところに、πラジアン(角度法でいうと90度のこと)を代入すると、cosπ= -1, sinπ= 0 であることから、人類の至宝 eiπ = -1 が得られるのである。

 

 数学の神秘に触れて

ここまで読んでくださった方は、数学の革新的な部分がわかってしまったような気分になったに違いない。なんせ、3つの不思議な数や三角関数までが、すべてかように美しく互いに連携していることを知ってしまったから。宇宙人に教えてあげたいような気分じゃないかな?

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井垣伸子

井垣伸子

数学者 東京都出身。関西学院大学教授、博士(工学)。数学を実社会に応用して、複雑な状況における意思決定を支援する研究をしている。氣圧療法士の資格をもつヒーラーでもあり、みえないものへの興味がつきない。みえないものをとらえようとする写真家でもある。
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