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Nov 1, 2017

数学的妄想

愛の地球に変えるには

Photo & Text by Nobuko Igaki

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ネットワーク効果って聞いたことある?

たとえば、世の中にFax送受信機が一台しかなかったら、その所有者は誰とも通信することができない。Fax送受信機を持つ人の数が増えれば増えるほど、Fax送受信機をもつことの価値が上がる。つまり、FAXを使う人のネットワークが広がるほど、そのネットワークに参加する価値は高まる。この効果のことは、ネットワーク効果ともネットワーク外部性とも呼ばれている。

 

あれよあれよと普及してしまうメカニズム

地球上の人が感じている「Fax送受信機の価値x」が、0から1の間に均一に分布しているとして、 価値の高い人(価値が1の人)から順に、 Fax送受信機の購入が開始されると仮定する。今、「価値がxより大きい人全員」がすでに購入しているとし、つぎに価値xをもつ人が購買するかどうかの意思決定をする場合を考えよう。そのときに、この人は、価値xとFax送受信機一台の値段Cを単純に比べるのではなくて、「地球の人全体を1とするとそれに対して(1-x)の人がすでに購入ずみである」というネットワーク効果も考慮するであろう。そのときのFax送受信機の価値は、本来この人が感じている価値xとネットワーク効果分の(1-x)の掛け算で表せるかもしれない。つまり、y=x(1-x)という価値になる。そして、この価値yと価格Cを比べて、もし価値yの方が価格Cよりも大きいならば、この人は購入を決断するであろう。この場合が、冒頭の図に示されている。この図のような場合、xの左どなりにいる人も、その左どなりにいる人も同様に価格Cよりも価値yが高いので、次々と購入することになる。このように連鎖的に購入が続き、結局、図のA点にいたるまでは、特に広告などでプッシュしなくても、あっという間にFax送受信機が普及してしまうのである。

 

初期の冒険者たち

上記ではFax送受信機を例にとってお話したが、これは一般的なネットワーク普及の様子と思ってもよい。そして、ネットワーク普及に必要不可欠なのが、もうお気づきの方もいるであろうが、初期の冒険者たちの存在である。冒頭の図でいえば、点Bの右側の、高い価値をみとめている人たちのことである。かれらは、コストCよりもy=x(1-x)の方が低いような、1に近い価値xを持っているにもかかわらず、損をしてでも新しいネットワークに加わろうとする冒険者たちである。かれらの人数が足りずに、価値1の人から普及しはじめ点Bの右側で普及が止まってしまう場合は、普及はそれ以上は進まない。初期において、点Bを超えるか超えないか、それが普及の様子を決めると言っていい。

 

愛の地球に変えるキーマンは?

経済優先主義がいくところまでいって、いまや地球上の富の99%をたった1%の人が独占しているとさえ言われている。かたや、経済的成功よりも心の平安や幸せを追求する人生を歩み始めている人も増えてきているように思う。Cradle Our Spirit! の読者のみなさんも、きっとそんな愛に生きる冒険者たちだと思う。そんな仲間が一人また一人と増えていき、あるポイントに至るとき、一気に愛の力がこれまでの経済優先主義を凌駕し、あれよあれよという間に愛のネットワークに包まれる地球が出現するであろう。そのあるポイントを超えるところにいるキーマンは、あなたかもしれないし、あなたの近くにいる人かもしれないし、あるいは、Cradle Our Spirit!の新しい読者かもしれない。愛の地球の実現が間近であるような予感がする。

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井垣伸子

井垣伸子

数学者 東京都出身。関西学院大学教授、博士(工学)。数学を実社会に応用して、複雑な状況における意思決定を支援する研究をしている。氣圧療法士の資格をもつヒーラーでもあり、みえないものへの興味がつきない。みえないものをとらえようとする写真家でもある。
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