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Oct 4, 2019

この星で、また逢えたから。

「おいでーーーーー!!!!!!」
Text by Ai Funato & Photo by Mikako

二年前の夏

ビクトリアのBeacon Hill Parkで。

わたしは 絶叫していた。

比喩ではなく、文字通り

腹の底から 叫んでいた。 

その日は 雲ひとつない青空で

緑の海のような公園は

太陽と愛し合うひとびとが にこにこと行き交い

野生のリスや孔雀や鳥たちが

木漏れ日と遊んでいた。 

散歩道を抜けると 突然

岩肌が露出した丘があった。 

人影は少なく

しんと空気が澄んでいて

オレンジ色の土岩には

太古の壁画のように 影がくっきりと染み込む。 

生まれたての地球みたいな場所だった。 

ここだ、と わたしは思った。 

心臓が どくどくと波打った。

丘の上に立って。

息を深く吸った。

そして、叫んだ。 

「おいでーーーーーーーー!!!!!!!」 

のんびりと降り注いでいた光が

一万分の一瞬、静止した。

もう一度。 

「おいでーーーーーーー!!!!!!!!!!!」 

空の青の粒子が、震えた。 

声が、波になって

わたしの細胞と世界を 揺らした。

————————————-

「雲ひとつない青空の日に、

 空に向かって『おいで~!!!』って

 思いっきり叫ぶの。

 そしたら、赤ちゃんが来てくれるよ」 

そう教えてくれたのは I さんだった。 

「ここだよ!」

「もう準備できてるから、来ていいんだよ!!」 

待ってくれている赤ちゃんに、そう知らせるの。 

雲の上まで聞こえる声で、合図するの。

葛藤して、戦って、泣き伏しても

ず~っと、小さな命は待ってくれている。

お母さんがほんとのほんとに準備ができる時を、待っている。

その命に向かって、知らせるんだよ。 

———————————————-

人生で、あんなに叫んだことはなかった。

たぶん、この世に生まれた時くらい? 

腹の底どころか、

足の裏の下のずっとずっと下の……

地球の真ん中から、叫んだ。 

自分でもびっくりして、おかしくて、

ひとりで泣いて笑った。 

それから1年ちょっと後。

雲の上で見ていた命は

わたしのおなかの中にやってきて

今、おふとんの雲の上で

ぐうぐう眠っている。 

あのとき。

聞こえたのかなあ。 

もう少し大きくなったら、聞いてみよう。 

ありがとう。

また逢えたね。

たくさん 笑おう。

たくさん 遊ぼう。

この星の上で。

愛より愛こめ。

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Ai ウェブサイト
http://ai-love-kotoba.com/

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Mikako(写真提供)
宮城県気仙沼市出身。カナダバンクーバー在住。フォトグラファー/アーティスト。ウェブサイトhttp://www.mikakochibaphotography.com

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Ai Funato
兵庫県明石市出身。カナダバンクーバー在住。 絵本作家、コピーライター、愛ことば講師。時々フラダンサー。 2007年アメリカ サンタモニカ~2010年カナダ バンクーバーへ移住。西海岸生活を満喫しながら、カウンセリング・ヒーリング・コーチングでの学びを活かし、たましいを癒す絵本・小説・エッセイなど、アーティストとコラボした作品を創作。 現在は、人と自然が調和する街 バンクーバーで子育てを満喫中! ローカル&オンライン共に、愛を「伝える」・ひとを「つなぐ」ことを使命として活動しています。 ウェブサイト http://ai-love-kotoba.com/
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